翳踏み【完】
ただ携帯を握りしめて、一人だけ椅子に座っている。それを笑う声が聞こえた時、ついに耐えることができなくなって、椅子から立ち上がった。それだけで静まり返る教室に、泣きたくなる。ただ、ひとをすきになっただけだよ。そう、呟きたくなって、唇を噛んだ。逃げ出したくなって、足を動かす。そのまま教室のドアを目指した。
教室のドアから出ようとした瞬間に誰かにぶつかって、思い切り倒れそうになったところを抱きかかえられた。
「あ……、ごめんなさ」
反射的に謝罪しようとして頭をあげると、その先には、先輩の軍団と呼ばれているクラスメイトがいた。
「椎名?」
小さく呟かれて、事情を知っているだろう彼が、あまりにも痛々しい顔で私を見ていることになおさら苦しくなる。
可哀想だと思われているのかもしれない。ただの遊びに舞い上がって、クラスメイトにさえ嫌われて、きっと、この先に先輩にすら見放される私を憐れんでいるのかもしれない。そう思うと、やっぱり無理だと思った。感情があまりにも忙しくて、視界が歪んでくる。それに気づいたらしい彼がぎょっとしたのを見て、言葉を返す余裕もなく走り出した。
教室のドアから出ようとした瞬間に誰かにぶつかって、思い切り倒れそうになったところを抱きかかえられた。
「あ……、ごめんなさ」
反射的に謝罪しようとして頭をあげると、その先には、先輩の軍団と呼ばれているクラスメイトがいた。
「椎名?」
小さく呟かれて、事情を知っているだろう彼が、あまりにも痛々しい顔で私を見ていることになおさら苦しくなる。
可哀想だと思われているのかもしれない。ただの遊びに舞い上がって、クラスメイトにさえ嫌われて、きっと、この先に先輩にすら見放される私を憐れんでいるのかもしれない。そう思うと、やっぱり無理だと思った。感情があまりにも忙しくて、視界が歪んでくる。それに気づいたらしい彼がぎょっとしたのを見て、言葉を返す余裕もなく走り出した。