翳踏み【完】


「――もう、会うのやめるわ」


何の前触れもなく、淀みのない声で言った。その声に、返す言葉もない。やめよう、という提案ですらなかった。会うことをやめるのは先輩の意志で、私がそれを覆すことなんてできない。


「ど、してですか」


分かっているのに諦められなくて、ばかみたいなことを聞いた。理由は知っている。先輩は、ただ、ゲームをしていただけだ。

昨日までこの部屋で、私を甘やかしていた声が笑った。どうしようもなく、乾いた音だった。それだけで、全ての終わりを予感してしまう。

嫌だ、聞きたくない。聞きたくないよ。先輩、お願いだから、違うと言って。そう、思うのに。


違うなんて、言ってくれない。

ただの暇つぶしの道具だった。玩具の様に遊んで、いらなくなったら。


「飽きたんだよ、わかんねえ?」


先輩が飽きたら、ゲームは終了だ。

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