翳踏み【完】
ばらばらくだける
目が醒めたら全てが夢であれば良いのに、そんな都合の良いことなんて起こらない。いつだって都合の悪いことばかりが起きるから、現実なのだろう。
瞼を持ち上げて、息を吸った。今自分が横になっている場所がどこなのか、どうしてここにいるのかを寝ぼけた頭で思考して、ついさっき自分に起きた出来事を思い返した。
後悔しないように、先輩にぶつけることすらできなかった。まるで知らない人みたいに呟かれて、それでもすきだと叫ぶ度胸がなかった。そうか、知らなかったことにしたいくらい、私が嫌いなんだなあ。むしろ、どうでもいいのかもしれない。
嫌いだと思うほどの思い入れもないのかもしれない。とても綺麗な女の子を連れていた。やっぱり私なんかじゃ不相応だった。一緒にバイクにも乗って、当たり前に隣を歩いて。全部私にはできなかったことだった。
悲しいくらいにお似合いで、苦しいくらいに私とは関係のない出来事だ。
振られる前に終わって、魔法が解けたみたいに他人に戻った。携帯には何の連絡もないし、茹だるほど暑くたって、もうアイスクリームを持って私の前で笑ってくれることもない。
秘密だよと笑って口付けてくることも、汗ばんだ髪を撫でてくれることもない。
そう、思ったら、ばかみたいに苦しくなるからダメだ。
忘れようと呟いて、言葉とは裏腹に、大粒の涙が落ちた。
瞼を持ち上げて、息を吸った。今自分が横になっている場所がどこなのか、どうしてここにいるのかを寝ぼけた頭で思考して、ついさっき自分に起きた出来事を思い返した。
後悔しないように、先輩にぶつけることすらできなかった。まるで知らない人みたいに呟かれて、それでもすきだと叫ぶ度胸がなかった。そうか、知らなかったことにしたいくらい、私が嫌いなんだなあ。むしろ、どうでもいいのかもしれない。
嫌いだと思うほどの思い入れもないのかもしれない。とても綺麗な女の子を連れていた。やっぱり私なんかじゃ不相応だった。一緒にバイクにも乗って、当たり前に隣を歩いて。全部私にはできなかったことだった。
悲しいくらいにお似合いで、苦しいくらいに私とは関係のない出来事だ。
振られる前に終わって、魔法が解けたみたいに他人に戻った。携帯には何の連絡もないし、茹だるほど暑くたって、もうアイスクリームを持って私の前で笑ってくれることもない。
秘密だよと笑って口付けてくることも、汗ばんだ髪を撫でてくれることもない。
そう、思ったら、ばかみたいに苦しくなるからダメだ。
忘れようと呟いて、言葉とは裏腹に、大粒の涙が落ちた。