翳踏み【完】
「らくまくん、は、何でもないです……、ふつうのおともだち、なんです」
「うん、お前がそう思ってんなら、それでいい」
「しんじてくれますか、すきなんです」
「菜月、泣くなって、」
抱き締める手を緩めて、私の瞳を見た。いつもと同じ優しい指先だ。どこまでも近い距離にいる。
「信じるよ」と、先輩が笑った。
「すきなんです、泣きたいくらい」
「うん」
「他の女の人と一緒に居る所を見るのが嫌になるくらい、すきなんです」
「うん」
「すきです。付き合いたいです。隣に居たいです。一緒に笑っていたいです。キスしたいです。抱き締めてほしいです。こんな私でも、すきでいるのを、やめたくないです」
「やめなくていいよ、やめられたら、困る」
「じゃあやめません」
「はは」
「なにがおかしいんですか」
「菜月が鈍感すぎて気狂いそうだと思ってたけど、俺も大概鈍感だったんだなって気付いたら笑えた。菜月みてえに真面目じゃねえし、いつも困らせてるし、クソ女からやっかみうけてるし、どうせ俺が怖くて何も言いだせないでいるんだと思ってた」
弱気そうな先輩が呟く言葉に思わず目を丸くしてしまう。そんなふうに、思っているわけがないのに。そんなわけないのにと呟いたら、初めて出逢った日みたいに、先輩が優しく笑った。
「キスしたい」
許可なんて必要ないのに、先輩が唐突に呟く。その言葉に頷いたら、しあわせの匂いがした。
俯いた視線の先に、二つの影が絡んでいる。小さく笑っている間に、先輩が「世界中に俺の彼女だって見せつけてやりたい」と呟いたのを聞いた。
秘密の夏が、終わろうとしている。口付けて、もう一度瞳がかち合った。
「せんぱい、つきあってください」
答えはもう、知っている。
「うん、お前がそう思ってんなら、それでいい」
「しんじてくれますか、すきなんです」
「菜月、泣くなって、」
抱き締める手を緩めて、私の瞳を見た。いつもと同じ優しい指先だ。どこまでも近い距離にいる。
「信じるよ」と、先輩が笑った。
「すきなんです、泣きたいくらい」
「うん」
「他の女の人と一緒に居る所を見るのが嫌になるくらい、すきなんです」
「うん」
「すきです。付き合いたいです。隣に居たいです。一緒に笑っていたいです。キスしたいです。抱き締めてほしいです。こんな私でも、すきでいるのを、やめたくないです」
「やめなくていいよ、やめられたら、困る」
「じゃあやめません」
「はは」
「なにがおかしいんですか」
「菜月が鈍感すぎて気狂いそうだと思ってたけど、俺も大概鈍感だったんだなって気付いたら笑えた。菜月みてえに真面目じゃねえし、いつも困らせてるし、クソ女からやっかみうけてるし、どうせ俺が怖くて何も言いだせないでいるんだと思ってた」
弱気そうな先輩が呟く言葉に思わず目を丸くしてしまう。そんなふうに、思っているわけがないのに。そんなわけないのにと呟いたら、初めて出逢った日みたいに、先輩が優しく笑った。
「キスしたい」
許可なんて必要ないのに、先輩が唐突に呟く。その言葉に頷いたら、しあわせの匂いがした。
俯いた視線の先に、二つの影が絡んでいる。小さく笑っている間に、先輩が「世界中に俺の彼女だって見せつけてやりたい」と呟いたのを聞いた。
秘密の夏が、終わろうとしている。口付けて、もう一度瞳がかち合った。
「せんぱい、つきあってください」
答えはもう、知っている。