14日間の契約結婚~俺様御曹司の宇宙最強の恋物語~

 愛人はどうしてそんな声が聞こえるのか、自分でも不思議で分からないまま。
 心から喜んでもらえていないなら、何もするのは辞めようと思ったのだ。

 何かを話していても、違う声が聞こえてくることに恐怖を感じ始めて、愛人は次第に口数が減って行った。
 喋らなければ、誰も何も言わないだろうと…。


 それでも家にいると、何かと聞こえてくる肚の声が嫌になり。
 中学になると愛人は夜遊びをするようになった。
 悪い連中と絡んで遊びわけでもなく、ただ一人で夜遅くまで帰らない…そんな日々を送るようになった。

 
 当然、萌も麗美も帰りの遅い愛人を叱っていた。
 だが

(こんな遅くまで中学生が遊んでいたら、ご近所に何を言われるか分からないわ)

 と、麗美の本音が聞こえてきて。
 別に自分を心配しているわけじゃないんだと思い込んだ愛人は、高校生になるとわざと遠い総有市(そうゆうし)の学校を選び家にいる時間を短くすることに専念していた。
 大学になると寮に入り家には帰ってこなくなり。

 一度は別のコンサルティング会社に就職した愛人だったが、鷹人がアメリカ社の支社長になると言われアメリカで結婚することが決まり、姉の麗香は国際弁護士になりアメリカに住む事になり、優愛も麗香と同じ国際弁護士になり個人事務所を設立した事から、萌に戻ってきてほしいと頼まれた愛人。


 どうせ、自分しか頼れなくて仕方なく頼んでいるのだろうと愛人は思ったが…。

 萌の心の声は無言だった。
 心の声が聞こえないという事は話していることが本心であることに間違いがない。

 それでも確信が出来ない愛人は、暫く萌を見ていた。

 萌の目は真剣で、愛人に申し訳ない気持ちがいっぱいの目をしていた。
 その目を見た愛人は萌を信じて森沢コンサルティングに、転職をしたのだ。


 愛人が23歳の時だった。
< 35 / 98 >

この作品をシェア

pagetop