14日間の契約結婚~俺様御曹司の宇宙最強の恋物語~
コンコン。
「愛人はいるぞ」
萌がやって来た。
愛人に似た感じの優しい紳士。
茶系のスーツがとても似合っている。
もう60代になるが若々しく、社員からも慕われている。
「おはよう愛人」
「おはようございます…」
ムスっとした表情で挨拶を返した愛人は、仕事の手を止めないままだった。
「今日は紹介したい人がいるんだ」
ん? と愛人が目だけ向けると。
萌の後ろから入ってきたのは、見た事もない綺麗な女性だった。
透明感溢れる白い肌に、可愛らしい丸顔にぱっちりした切れ長の目をしている。
金色の髪をショートにしている事から、顔がハッキリ判る。
唇がプルっとして、魅力的で、黒ぶち眼鏡が生真面目感を漂わせている。
ブルー系のパンツスーツ姿で、靴はかかとがない黒い靴を履いているが、かなりスタイルが良い。
かかとがない靴でもかなり長身なのが判る女性。
萌と並んでも15cmほどの差しかない。
何気に見ていた愛人だが、女性をじっと見て何かを感じたようにハッと目を開いた。
「今日から私の秘書を務める事になった、笹野リラ(ささの・りら)さんだ」
紹介されると、そっと会釈をした女性。
その会釈はとても上品で、気品が溢れていて、愛人は思わず見惚れてしまった。
「私の秘書が急に体調を崩してしまい、緊急入院になったんだ。それで、急遽派遣会社にお願いしてきてもらった」
「そうなんだ…」
デスクの上にある沢山の書類を見た萌。
「お前は秘書はいなくていいのか? 大変そうだが」
「俺は…」
いらない! そう言いたかった愛人だが…。
ふと、リラを見ていると…
「秘書は必要だ! 毎日、こんなに沢山の書類がデスクにあるんだ。一人じゃ大変なことくらい、見て判るだろ? 」
ちょっと怒った口調で言う愛人に、萌は驚いた目を向けた。
「社長の周りには、頼まなくてもしてくれる人は沢山いるだろう? 」
「まぁ…そうだが…」
「じゃあさ、そっちの秘書さん。俺につけてくれない? 」
「はぁ? 」
「俺、社長の仕事も引き受けてんだけど判るよね? 」
「まぁ…そうだが…」
「じゃあ、秘書は俺につけてくれる? もう一人、派遣から頼めばいいだろう? 」
ちょっと驚いた目をして萌はリラを見た。
リラは「大丈夫ですよ」と頷いた。