14日間の契約結婚~俺様御曹司の宇宙最強の恋物語~

「これ。本物の母子手帳よ」
「え? 」

 薄明りの中。
 
 可愛いパンダの親子の表紙が描かれている母子手帳が見えた。
 そのこには母親の名前が書かれている。

 ベルリラと…。

「これは、8年前。私が子供を産んだ時の母子手帳。ここには、子供がお腹の中で育ってゆく経緯が全て書かれているの。そして産まれた日も…」
「あんた…まさか…」

 リラは小さく笑った。

「気づてくれた? 私が、竜夜君の本当の母親。そして…貴女が8年前に誘拐した赤ちゃんの、本当の母親よ」

 茂代は顔面蒼白になってしまった。


 茫然とする頭の中で蘇る8年前の光景…。

 日差しの温かい穏やかな風が吹いている中。
 茂代は半分茫然と歩いていた。

 そんな時。
 ベビーカーに赤ちゃんを乗せて歩いているリラ(ベルリラ)の姿を見かけた茂代。

 この世の人とは思えないほど美しい女性と、見ているだけで心を奪われそうになるほど可愛い赤ちゃんに茂代は目が釘付けになった。

 
 ヒューっと強い風が吹いてきて、赤ちゃんの帽子が飛ばされ木の枝に引っ掛かった。
 その帽子をリラ(ベルリラ)が取るためにベビカーを止めた。

 木の枝に引っ掛かっている帽子をとっているリラ(ベルリラ)の姿を見て、茂代は考えるよりの先に体が動いて赤ちゃんを抱きあげそのまま走り去った。

「待って下さい! 」

 気づいたリラ(ベルリラ)が追いかけてくるのを見て、必死で走りぬき、通りに出てタクシーを見つけ素早く乗り込んだ茂代はそのまま逃走した。

 タクシーを必死で追いかけてくるリラ(ベルリラ)の姿がミラーに映っているのが目に入ったが、見ないふりをしてそのまま逃走した。


「あの時の…。まさか…」

「思い出してくれた? 貴女が誘拐した赤ちゃん、私が産んだ子供よ」

「…なんで? あの後、警察にも届けないで捜索だって出されていなかったじゃないの! 」
「そうね…。それが出来ていれば、こんなに長い年月かからなくても済んだのは確かね…」

 少し悲しげな目をして、リラは遠くを見つめた…。

「…誘拐されたと言いながら、警察に届けも出さないなんてどうかしているんじゃないの? 」
「できなかったの。…あの子は、この地球の子供ではないから…」
「はぁ? 」

「あの子は…地球で生まれた子供ではないから…。だから、警察に届ける事も出来なかった…捜索してもらう事も出来なかった…」
「何を言っているの? 」

「私は地球人ではありません。この地球に、戸籍がない子供が誘拐されたとしても。地球の警察は動けませんから…」

 頭が真っ白になった茂代は笑い出した。
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