極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
最終章 私以外を見るのは契約違反です
「澪音、今日は予定がないなら出かけるぞ。
盛実、澪音の口座に……」

「だから。
それはもう、いいんです」

朝食の時間、古渡さんの言葉を実行に移そうとしている盛実さんを止める。

「古渡さんを友達くらいには思ってる、って言いましたよね?
友達と出かけるのに、お金を取ったりしません」

「友達……でも、いいか。
少し前進だしな」

にぱっと彼は笑い、オムレツを口に運んだ。
それにツキン、と針を刺されたように胸の奥が鋭く痛む。

――友達。

それは、古渡さんを納得させるというよりも、自分に言い聞かせていた。
この感情はただの友愛、だって。
私は夢が叶うまで恋などしないと誓ったではないか。

「今日はどこへ行くんですか?」

「リノアの店だ。
少し遅くなったが、服ができたそうだ」

「それは楽しみです」

自分の気持ちに気づいて一週間。
古渡さんは私の本心に気づいていない。
< 122 / 178 >

この作品をシェア

pagetop