極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
なぜかそういうのに、少しだけムッとした。

次の、冬物も古渡さんは注文してくれた。
でもきっとその次、春物の注文はしないだろう。
だってその頃には私は、彼の元を去るのだから。

「リノアさんと古渡さんって、もともと知り合いなんですか?」

古渡さんが席を外した隙に、彼女へ訊いてみる。
ぱっ、と顔を上げた彼女は、困ったような泣きだしそうな、複雑な表情をしていた。

「あっ、やっぱりいいです。
ごめんなさい」

それを見て、我ながら意地悪な質問をしたと急に恥ずかしくなった。
それにきっと、どんな答えでも後悔しかないだろうし。

「いいんです、古渡さんの奥様としては気になりますよね。
彼は私のパトロンで、……そういう関係も、……もちろん、ありました」

言いにくそうに彼女から告げられ、腹の底がカッ、と熱くなった。
しかしこれは結婚する前のことだ。
それに私と彼はもともと、偽装結婚、で。

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