極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
あまりお待たせするのも悪いので、急いで一階のロビーへ降りた。

「古渡様」

すぐに私を見つけた黒スーツのイケオジが声をかけてくれた。
彼はこのレジデンスのコンシェルジュだが、いつも同じ人がいるようにしか見えないんだよねー。
二十四時間常駐だとさすがに、シフト制だと思うんだけど。
私の中でヒルズの不思議のひとつになっている。

「あちらで、お客様がお待ちです」

彼が手で指し示した先では、古渡さんよりも少し年上の男がソファーに座っていた。

「ありがとうございます」

コンシェルジュに礼を言い、そちらに足を踏み出した途端。

「澪音!」

目のあった男が一気に距離を詰め、私に――抱きついた。

「いやー、大きくなったね!
僕だ、裕一郎(ゆういちろう)お兄ちゃんだよ!」

状況が理解できずに突っ立っている私の背中を、男がバンバンと叩く。

「裕一郎……おにい……ちゃん?」

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