極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
「そうだよ、裕一郎お兄ちゃんだよ」

にかっ、と眩しいほどに白い歯を見せて笑った彼と、過去の記憶がぴったりと重なった。

「ああ!
裕一郎お兄ちゃん!」

「やっとわかったの!?」

私の髪が乱れるなんてかまわずに、がしがし撫で回している彼は昔、白井さんのところで働いていて、もちろん私は可愛がってもらっていた。

「もう、子供じゃないんですから」

「ごめん、ごめん」

乱れた髪を直す私を笑っている彼は、昔からこうなのだ。

「最初からそう言ってくれたら、直接、部屋に来てもらったのに」

彼を促し、エレベーターに乗る。

「えー、澪音を驚かそうと思ってさ」

「驚きましたよ、もう」

あの頃は高校を卒業したばかりで、いかにも気のいいお兄ちゃん、といった感じだった彼だが、いつのまにか立派な男性になっていた。
……中身はあまり、変わっていない気がするけど。

「どうぞ」

< 129 / 178 >

この作品をシェア

pagetop