極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
「あー、まあ。
それより裕一郎さん、どうしてここがわかったんですか」

曖昧に笑って話題を変える。
契約による偽装結婚だなんて、知られるわけにはいかない。

「ひさしぶりに帰国して師匠に会いにいったら、澪音が雇い主でここに住んでるっていうからさ。
僕も雇ってくれないかなー、……っていうのは冗談だけど」

彼がくすくすとおかしそうに笑う。

「帰国、って?」

白井さんの店が移転してから彼がどうしていたのかは、私は知らない。

「いま、パリの二つ星レストランでシェフパティシエしているんだよ。
日本が混みだす前に、少し早めのバカンスで帰ってきたってわけ」

「えっ、パリですか!?」

「……失礼いたします」

食いつき気味に身を乗り出したところで、園原さんがお茶を運んできた。

「あっ、……えと」

ちょっとはしたなかったかな、と顔がほのかに熱くなる。
そんな私を裕一郎さんは笑って見ていた。

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