極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
番外 「おやすみ、澪音」~一秋side
ドアに耳をつけ、中の様子をうかがう。かさりとも音がしないのを確かめ、そっと開けた。

「澪音、もう寝ている……よな」

音を立てないように気をつけ、彼女の私室へ忍び込む。
ベッドでは澪音が、規則正しい寝息を立てていた。

「……澪音」

その枕元に跪き、寝顔を眺める。
ちょっぴり垂れた目がキュートな、俺の天使。
こんなに人を、愛おしく思ったことはない。

澪音に出会って、俺の生活は一変した。
偽装結婚の偽嫁、それだけのはずだったのだ、最初は。

澪音は俺の周りにいる女と違い、ズバズバ思ったことを言ってくる。
まあ、そのあたりは澄美の教育の賜物といったところか。
アイツもいつも、俺になにかと食いついてきたし。
すぐに怒るし、よく笑う。
くるくる変わる表情をいくら見ていても飽きない、などと思ったのはいつだったか。

「可愛いな、澪音は」

指先で、柔らかな頬をつつく。
こんなこと、目が覚めているときにしたら契約違反だと怒られかねない。
まあ、その怒る顔も可愛いからいいのだけれど。

澪音の家庭環境は利用できると判断したし、同情もした。
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