彼が冷たかった理由。
「あ、あのっ!」

放課後。
渉に帰ろ、と声をかけて一緒に下駄箱に行ったときだった。

「あ、こんにちは」

「こんにちはっ...
昼休み、ありがとうございました!!
先輩だって図書局員の方から聞いて...」

「そうなんだ。
...加賀屋君、ね。本読んだら感想教えて」

気をつけて帰るんだよ、と言って、そそくさと学校からでた。


「誰、あの男」

「加賀屋君...って言うらしいね。
昼休み図書室でオススメの本教えてあげたの」

「だから昼休みいなかったの」

「...まぁね」

「僕のこと放置して、男と話してたわけだ」

そんな言い方をされたのがムカついて、思わず声を張り上げてしまう。

「そんな言い方ないでしょ!?」

男と話してたなんて、まるで私が男目当てで行ったみたいな言い方ではないか。

なわけないのに。

というか、昼休み女の子のところに行ったのは彼だって同じことであろう?

「渉だって昼休みいなかったのに、私にそうやって偉そうに言える権利ある?」


もう知らない、と子供のように吐き捨てて、渉を置いて早足で歩く。

彼が追いかけてくる様子も、声をかけてくる様子も、無論、謝る様子もなかった。

「っ、渉のばか」


私は今まで、彼の交友関係になんて一切口を挟めてこなかった。
興味はあったし、きっと嫉妬もしていた。
でも交友関係なんて私が縛れることではない。

だから、何も言わずに過ごしてきたのに。

なぜ彼に言われなければならない。


《別れようとは思わないわけ?》

突然、その言葉がフラッシュバックした。
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