彼が冷たかった理由。
「ねぇねぇ、優愛と柿崎って別れたの?」

そんな質問を放課後、女子にされた。
私と女子数人の残る教室。
渉もきっとまた、女の子と帰るのだろう。

「...もうきっと別れてるんじゃないかな。
しばらく話してないし、わた...っ柿崎君も、女の子とかと帰ってるのよく見かけるから」

「何それっ、自然消滅!?」
「ありえな〜い!」
「柿崎はどういうつもりなんだろう...」

「最初から遊びだったんだよ、きっと。
見事に騙されてただけだと思う」


私帰るね、なんてサラッと教室から出てきた。
チクリ、と心が痛む。

やっぱりきっと彼は【彼女持ち】というステータスを手放したくなかったのだと思う。

そう思えば思うほど、辛くなった。

...早く帰ろう。

オレンジ色に染ってしまう空を窓から眺めた。


「なんでそんな事言うの!?
私は渉君のこと好きだったのに!」

そう叫んで女子生徒が空き教室から出ていく。

涙で床を濡らしていった彼女もまた、私と同じ心情なのだろう。

「...まだ帰ってなかったの」

空き教室から出てきた渉が言った。

「......ばいばい」

そう手を振って下駄箱へ歩く。
またねって言いたいところだが、もう言いたくないとも感じる。

「渉先輩、好きです!!
私と付き合ってください!」


そんな声が後ろから聞こえる。
答えが気になるが、聞くために立ちどまる訳にもいかない。

「ごめん、僕彼女いるから」

そう断ったのがかすかに耳に入る。
もう彼女できたんだ。早いなぁ。

...寂しい、なぁ。


忘れろ忘れろ、なんて頭を振って叩いて、靴を履き替える。

「あ、秋元先輩っ!」

後ろからそんな声がして振り返ると、加賀屋君だった。
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