彼が冷たかった理由。
「この前の本、面白かったです!」

「ふふ、でしょ?
私もあの本好きで、何度も読み返しちゃうんだ」

いつもと変わりないように接しようとするも、声のトーンは下がってしまう。

「...先輩、何かありました?」

「な、なにもないよ、なにもない...
ただちょっと小テストの点数悪くって」

「違いますよね、明らかに...。
最近隣に彼氏さんがいないのと、関係してますか」

「あ、あるわけないじゃん!
ていうか、彼氏って?
ごめんね私、あんまり覚えてなくて」

「いつ別れたんですか」

確信を持ったようで、彼はどんどん話を進める。
その質問に、どんどん心が抉られてしまう。

「わかんない、けど...
自然消滅みたい」

あははー、なんて、涙ぐんだ声で笑ってしまう。

「きっと、そもそも、好きなのは私だけになったんだと思う」

またね、なんて言って、校舎から出た。
辛い、苦しすぎる。

ごめんなさいって謝れなかった、自分が嫌になる。

どうして謝れなかったんだ、私。
次の日に謝ればよかったものを、私は悪くない、なんて強がるから。

「優愛」

ほら、こんな幻聴まで聞こえてしまう。

「ねぇ、優愛ってば!」

私がそれほど、依存してたから...!


「聞こえてるんでしょ、優愛!」

ガっと肩を掴まれ、後ろに引き寄せられる。
見上げると、私よりもずっと背の高い、渉がいた。


「っ、あ...」
< 17 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop