好きになった先生は猫かぶりで腹黒な先輩だった
完全に先輩の真似。生意気な後輩。
言ってから気づいて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。



「片耳聞こえなくてもそれを思わせない演奏がしたい。」



『そう思って伴奏引き受けたんですよね?』



「うん。」



『全然卑怯なんかじゃないですよ。
先輩の目指してるもの協力するから、私の目指してるものに協力してください。』



「お前・・・」



『はい?』



「お前生意気。」



ほぺったをぎゅーと引っ張られる。



『ぎょめんにゃしゃい。』



「でもサンキュ。」



手を放してそっぽ向いてお礼を言う先輩は少しかわいく見えた。



『あ、カノン先輩もすごい心配してたみたいなので連絡しておいてくださいね。』



電話する前に見せた微笑みはカノン先輩に似合わない悲しそうな笑顔だった。



「そうだな、アイツには言いたいことが山ほどある。」



いつもの調子を取り戻したみたい、よかった。
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