大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「今後、丸の内は商業地域として発展すると思われます。持っておいて損はない。建設から手を引くと言われれば弊社が懇意にしている建築会社に引継ぎ、正規の費用で建てさせます」


てっきり、建築そのものを中止すると思っていた私は、思わず敏正さんを見つめた。


「しかし、借金があるのには違いない。それは津田家で補填しますが、三谷商店の経営そのものを見直していただくのが条件です。私にその陣頭指揮を執らせていただきたいと思っております」


息子ほどの歳の敏正さんに優位に立たれる父は、おそらく屈辱だろう。

華族としてちやほやされた人生を歩んできたのだからなおさらだ。

けれども、ここでこの話を呑まなければ、三谷商店の未来はない。
父に商才などないのだから。


「わ、わかりました」

「お父上には社長を続けていただきますが、決済をする際は必ず津田紡績を通してからにしていただきたい」


< 109 / 338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop