大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
愛しあえた奇跡
「おかえりなさいませ!」


その日、敏正さんが帰宅したのは十九時を回った頃だった。


「ただいま。今日は特別元気だな」


彼から鞄を預かるとそう指摘されて首を傾げる。


「そうですか?」

「うん。仕事を始めてから少しずつ元気を取り戻しているように感じていたけど、今日は憑き物が落ちたようだ」


無自覚ではあったけど、今の幸せを噛みしめてもっと楽しもうと心が切り替わったからだろうか。


「憑き物って……」
「郁子が元気になってきたからか、仕事も絶好調だ。着替えを手伝ってくれ」


にっこり笑う彼は、私の頭をポンポンと叩いて二階に上がっていく。


「春江さん、食事のお仕度お願いします!」


私が炊事場に向かって大声で叫ぶと、敏正さんがクスッと笑った。


二階の部屋で背広を預かり衣紋掛けにかけていると、彼が口を開く。


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