大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
以前富子と訪れたカフェーの前に差しかかると足が止まる。

富子は結局旦那さまと離縁してしまった。

旦那さまの女遊びを両親に相談したら、お父さまが激怒して、なかば強制的に離縁させられたのだ。


離縁後一度会ったが、意外にも彼女はすっきりした顔をして、『私、相当苦しかったみたい。旦那さまに尽くすだけの時代はもう終わりよ。女も羽ばたかないと』と話していて、タイピストを育てる学校に通い始めたと耳打ちされたときはびっくりだった。

けれども、とても生き生きした様子に、ホッと胸を撫で下ろした。


「私も頑張ろ」


敏正さんという最高の伴侶を得て、順風満帆。

しかし、これは幸運だっただけ。

以前彼が〝今の地位に甘んじることなく、努力を重ねて生きていかねば〟と話していたように、私もできることはなんでもするつもりだ。

再び様々な店を覗きながら歩き始める。


「素敵……」

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