大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「こちら、江戸切子のぐい呑みです。少々値は張りますが、職人の技が光っていますよね」


陳列棚の中の江戸切子のガラス製品にくぎ付けになっていると、店員に話しかけられてうなずいた。


「最近は、このガラスの素材がとてもよくなっていまして。贈り物にしたらとても喜ばれますよ」


敏正さんに買って帰ろうかしら。贅沢?

私は悩みに悩み、菊つなぎ文様の入ったぐい呑みとそれとおそろいの徳利をひとつずつ購入した。

もちろん、春江さんと自分の大福も忘れずに手に入れて、弾んだ気分で家に帰り、早速夕飯の準備に取りかかる。


「うわー、きれいですね」


春江さんも江戸切子を見て目を輝かせた。


「ですよね。ガラス製品って光が当たる角度によっていろんな表情を見せてくれるから、ずっと見ていられるんです。敏正さんにこれでお酒を飲んでいただきたいなと」

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