私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!~生存ルート目指したらなぜか聖女になってしまいそうな件~
 身震いをすれば、ニジェルはイリスの顔を覗き込んだ。

「まだ、顔色が悪いみたい……無理はしないで?」

 心配してくる瞳は純粋を宝石にしたようで、胸が痛む。まだこの子自身はその未来を知らないのだ。

 うう。悲しい。こんなに可愛くて優しい子がドS調教騎士になるなんて、悲しすぎる。おねーちゃん泣けてきちゃうよ……。

 周りから見ればメリーバッドエンドでも、ヒロインにすれば幸せな結末なのよね。ヒロインには幸せになって欲しい。でも私だって死にたくない。それに、『千年の眠りルート』なら大量虐殺。死あるのみ。

 ……。

 いや、まって、私が悪役令嬢じゃない。だったらヒロインの幸せなんて阻止するのが当たり前じゃない!? 悪役令嬢なら悪役令嬢らしく、邪魔をしてやればいいんだわ!! いくらヒロインが幸せでもメリバエンドは阻止させていただきます!

 イリスは決意した。

 ヒロインのメリバを阻止することに。ニジェルが道を踏み外さないように。そして当然自分の破滅も阻止するのだ。

 鼻息荒く力こぶしを作る。

「ニジェル、私やるわ!」

「突然どうしたの? イリス?」

「メリバエンドは阻止するのよ!!」

 イリスの言葉に、ニジェルはきょとんとした。

「? めりばえんど?」

 ニジェルに復唱されてイリスはハッとした。

 思わず口に出ちゃってた!

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