囚われのお姫様
なんか俺までナンパみたいになっちまったな。

でも、泣いてる女の子ほっとくなんてダメっしょ!


「いえ、ほんとに大したことじゃないので……古い知人にとてもよく似ていたので……」

「昔?」

「……」


するとまた、舞姫は涙を拭くと俺のことをじーっと見つめ黙り込んだ。


「??」

「……」

「どゆこと?」

「あ、すみません。僕の名前は町田 多香音(まちだ たかね)といいます。助けていただいてありがとうございます」


ドクン─

そう、胸が深く鼓動を打った。

俺、僕っ娘好きだっけ?

この一人称、丁寧な口調、そして”まちだ たかね”という響き。

胸がギューッと、締め付けられる。

この子を見てると……なんとも言えない苦しさが心を支配していく。

これがよく言う恋ってやつ??

でもよく言われる心地いいトキメキやきゅんというより……すっげえ苦しくて切ない。

あーよくわかんねえ……なんだよこれ。


「あの!」


なんだかこの感情の得体の知れなさが気持ち悪くて、その場から去ろうとしたら呼び止められた。


「なんすかー?」

「れ……連絡先を聞いてもいいですか……?」
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