囚われのお姫様
「今度は、僕が綾瀬くんを守るんだ!!」


多香音さんがやったんだろう。水を放ちながら大悟を庇うように抱きしめそう叫んでいた。

私は突然の誠くんの行動にわけがわからなくなり多香音さんの名前の言い間違いに気づかなかった。


「ゲホ、ゲホ……」


水の中から咳き込みながら出てきた誠くんは、目を力いっぱい見開いて私を真っ直ぐ見ていた。


「なんで、とめたの美波ちゃん」

「だって……大悟は友達だし」

「こんなやついらないでしょ? ボクだけいればいいでしょ? 殺したっていいじゃんだって邪魔じゃんボクから美波ちゃん取ろうとしたんだもんボクと美波ちゃんの幸せを邪魔するやつは誰であろと許さないよ」


息継ぎもしないで早口でそう言った誠くんは今度は私にハンマーを振り上げてきた。


「いやああああああ!!」


わけわかんない。

私死んじゃうの??

誠くんはなんで私を殺そうとするの?

誠くんと私の幸せの邪魔をしたから?

誰が? 私が??

わかんないよ……。


「うわっ!」


再び大量の水が誠くんを包む。

お部屋はもう水浸しでぐちゃぐちゃだけど、今はそんなこと言っていられない。
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