囚われのお姫様
「関係ないでしょ」

「僕みたいに、後悔して欲しくないんです。先程その大切な広尾さんを殺そうとしましたよね。殺してしまったらもう会話をすることも出来なくなってしまうんですよ」

「……!」


ずっと下を向いていた誠くんは突然私を見てきた。とっても不安そうに瞳を鳴らしながら。

さっきハンマーで殴られそうになったからなのか、一瞬体がびくってなっちゃったけど、今の誠くんはとっても弱々しくてすぐ怖いって思いはなくなった。


「ボクはまた、間違えたんだ……」

「……?」

「こんな風に捕まっちゃって惨めだ。こんなんじゃ美波ちゃんにふさわしくない。どうすればもっと美波ちゃんにふさわしくなれる? 何が足りない? 勉強だって頑張った。顔だって綺麗に変えた。運動神経だってここのセキュリティを抜けれるくらいにはいい。あとは、あとはなにが……」


小声でブツブツと呟く誠くん。

ああ、そっか。

誠くんは……。


「自分に自信がなかったんだね」


かっこいい王子様みたいな立ち居振る舞いの中たまに垣間見る不安げなしぐさ。

それらは全部、自信のなさから来てたんだ。
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