五年越しの、君にキス。
五年ぶりの君

ベリーヒルズビレッジの敷地内にある、テナント屋上の日本庭園。

そのなかにある唯一の休憩処でもある団子屋さんは、私が働く柳屋茶園(やなぎやちゃえん)の得意客のうちのひとつだ。

いつもならとっくに受注を受けているはずの来月以降のお茶の発注がなかったので、ご挨拶がてら訪問したら、団子屋さんの奥さんが申し訳なさそうに口を開いた。

「実はね、梨良(りら)ちゃん。うちの店、来月いっぱいでの閉店が決まったのよ」

「え、閉店?どうしてですか?」

先月受注をもらったときはそんな話をしていなかった。

この店は日本庭園内にある唯一の休憩処でもあるうえに、庭園内でも一番美しいと言われている池周りの景色が一望できる、最高の立地にある。

客足だって、決して悪くはないはずだ。それなのに……

「ここのテナント契約が来月いっぱいで切れるのよ。決してお客さんがいないわけではないのだけど、ここに店を構えたときから比べると客足も売り上げも落ちててね。ここのモール内には他にも飲食店がたくさんあるし、お団子だけでこれから年単位での契約をするのはそろそろ厳しいかなって。主人と相談して決めたのよ。私たちもそろそろ年だしね」

驚きとショックを隠せない私に、奥さんが少し淋しそうに笑う。

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