五年越しの、君にキス。
さっきの女の人たちの噂を聞く限り、きっとこのパーティー会場にいるほとんどの人たちが、伊祥と四ノ宮グループのご令嬢とのお見合い、そして私のこと知っているのだろう。
どれだけの人に顔を見られてしまったかはわからないけれど、あまりうろうろせずに身を隠しておいて、タイミングを見計らって会場から姿を消すのが賢明だ。
何も知らなかった私は、どこかの企業の偉い方数名には伊祥の婚約者として挨拶をした。
ほとんどの方が私のことを笑顔で受け入れてくれたけれど、四ノ宮グループのご令嬢を差し置いて伊祥の婚約者の位置についたぱっと出の私のことを、内心でどう思っていたのだろう。
考えれば考えるほど、胃が痛くなってくる。
再会してから、五年前と変わらない笑顔で当たり前みたいに私をそばに置いていた伊祥のことを考えると胸が苦しい。
私とのお見合いを強引に推し進めてきた伊祥は、私と結婚して柳屋茶園との縁ができることは、美藤ホールディングスにもちゃんと利益があることだというふうに説明していた。
でも、それは私を納得させるための伊祥の嘘だったのかもしれない。