五年越しの、君にキス。
「そもそも、遅いから早く寝ようって言ったのは伊祥でしょ?」
「バーを出るときに、先にエロいこと考えてたのは梨良だよ?」
「考えてないってば!」
真っ赤になって右腕を軽く振り上げたら、その隙をついて、伊祥が私の首筋にかぷっと噛み付いてきた。
「考えてよ。だってこっちは、五年分ずっと足りてない」
顔を上げた伊祥のライトブラウンの瞳が、サイドボードのオレンジ色のランプの光を映して揺れる。
甘い熱を宿したその瞳で見つめられて、おかしくなりそうなくらいに心臓が騒いだ。
「梨良、愛してる」
蕩けそうなほどの甘さを纏った優しい声が、心地よく耳に届くと、つまらない意地を張っている余裕なんてなくなる。
空白の五年分、伊祥のことが足りていないのは私だって同じだから。
すっかり身体から力が抜けてしまった私に覆い重なるようにして抱きしめてきた伊祥が、私の頬に手のひらで触れながら愛おしげに目を細める。
五年ぶりに伊祥と確かめ合った熱は、私の心も身体もどろどろに溶かしてしまいそうなほどで。
泣きたくなるくらいに幸せだった。