五年越しの、君にキス。
私はカフェのスタッフではないのだけれど、「人手はいくらでもあったほうがいいから」とプレオープン二日前になって、ピンチヒッターとして伊祥に駆り出された。
別に構わないけれど、いつも急だし、強引なのが少し困る。
オープンの準備が整う頃には、店の前に正装をしたお客様がもう何人も集まっていた。
オープン時間ぴったりにドアが開くと、待っていたお客様たちが店内に一気に流れ込んでくる。
庭園の景色が一望できるテラス席は、特にお客様たちの目を惹いていた。
ちょうど桜の季節なのもあり、カフェの春メニューを堪能しながらのお花見は、お客様から好評だった。
プレオープンのお祝いは、午前中の三時間ほど。普段とは違うカフェでの接客に若干の疲れを感じ始めた頃、カフェ内を立ち回っては訪れたお客様に挨拶をしていた伊祥が私のほうに近付いてきた。