五年越しの、君にキス。
彼の気まぐれ

柳屋茶園の店内にある小さなテーブル席に腰掛けた伊祥が、目が合った私ににこにこと笑いかけてくる。

「和風カフェの打ち合わせ」と称して、担当者と思われる部下を引き連れた伊祥がやってきたのはもう三十分ほど前のこと。

早苗さんと担当者との打ち合わせは既に事務所で行われているというのに、伊祥はそれには参加せず、何をするわけでもなく私が働く姿をじっと見ている。

店に入ってきたお客様はお茶の試飲用のテーブル席を独占している伊祥を不審げに見ているし、じろじろと見られている私は接客がしづらいし。

はっきり言って、営業妨害だ。

とうとう黙っていられなくなった私は、店内にお客様がいなくなったタイミングで、カウンターから冷たく話しかけた。

「何しに来たの?」

「打ち合わせ」

「打ち合わせなら事務所へどうぞ?もう始まってるみたいだけど?」

「うん、俺はここで大丈夫。内容は全部畑中が把握してるから」

私の冷たい眼差しなど物ともせず、伊祥がにこやかに受け答えする。
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