五年越しの、君にキス。
伊祥が私の手を引いて連れてきたのは、ベリーヒルズ・モールの中にある和食器のお店だった。
ブランド品から人気作家さんの作品まで、用途様々なたくさんの食器が取り揃えてある。
その店に足を踏み入れた伊祥の手が、ぱっと自然に私から離れた。
「梨良はどんなのが好き?」
若干湿ってしまった手のひらを、仕事用の着物の上からつけたエプロンに撫でつけていると、青系でシンプルなデザインの陶器の中皿を手に取った伊祥が振り向いた。
「え?」
ちゃんと話を聞いていなかった。
ぽかんとした顔を上げると、伊祥がククッとなんだか楽しげに笑った。
「いや。梨良の食器の好みはどんなのかなーって」
「え?あんなにあるのに、まだお皿増やすの?」
伊祥に尋ねられて、まず何よりも先に驚きの言葉が口からついて出た。
もともと伊祥がひとりで住んでいた三LDKの広い家の大きな食器棚には、確実に使われていないだろうと思われるようなブランド食器がたくさんある。