五年越しの、君にキス。
家でパーティーをするときや、来客用に使うのかもしれないけれど。明らかにインテリアにしかならないアンティーク皿もあったし、洋食器、和食器ともに、いつ、どんなときに出番がくるのか謎なデザインのものもいくつもあった。
伊祥が今手にしているのと似たようなデザインの和皿だって、家の大きな食器棚に入っていたと思う。
使わない食器を増やすなら、その予算は何かもっと別の用途に使うべきだ。
じとっとした目で伊祥を見ると、彼が一瞬キョトンとした顔になる。
それから、手に持っていた中皿を戻してクスクスと笑った。
「あー、違う違う。これは和風カフェで使う食器のデザインを決めるための偵察。流行りのデザインとか、どんな作家さんのものが人気なのか見ておきたいなーと思って」
「そうなの?」
伊祥の趣味で連れて来られたのかと思ったら、仕事の一環だったんだ。
「うん。年齢層関係なく利用してもらいたいとは思ってるけど、現時点でのカフェのメインターゲット層は二十代〜三十代の女性なんだ」
「それで、私に?」
伊祥が別の中皿を手に取って眺めながら、にこりと笑う。