五年越しの、君にキス。
「まだ企画段階だけど、いろいろ構想はあってね。日本庭園を見にきたお客様にカフェを利用してもらうのはもちろん大前提なんだけど、あの場所で庭園の景色を臨みながらの人前式とか、結婚式の二次会ができたら雰囲気がいいんじゃないかなーとか思ってる。庭園の座敷はお見合いにも利用されるような場所だし、だったら結婚式にも利用してもらえるような店にできないかなーって」
「そうなんだ」
「ここ最近は梨良がいろんな場所の視察に付き合ってくれてるから、助かってるよ」
伊祥に微笑みかけられて、何のことだろうと首を傾げる。
しばらく考えて、彼の言う『視察』の意味に気付いた私ははっとした。
そういえば、ここ最近連日のようにランチに誘われて連れて行かれていた店は、和食系のお店ばかりだった。デザートだって、食べていたのは和スイーツばかり。
気まぐれな伊祥の、ただの贅沢ランチだと思っていたけど……ちゃんと仕事のことも考えていたのか。
そのことに気付いたら、色々な種類の食器を手に取って品定めている伊祥を見る目が少し変わった。