五年越しの、君にキス。
「梨良ちゃん、そろそろ休憩に入ってね」
顔を赤くして振り向いた私に、早苗さんがふふっと笑いかけてくる。
「気になるなら、電話でもかけてみたら?それか、たまには梨良ちゃんのほうから伊祥さんのオフィスに出向いてみるのもいいんじゃない?」
「それはさすがに……」
伊祥のオフィスは同じベリーヒルズビレッジ内にあるけれど、下から見上げるだけでかなりの威圧感があるガラス張りの超高層オフィスビルだ。
名だたる有名企業がいくつも入っているそのビルに、とてもじゃないけれどアポなしで乗り込む度胸はない。
「そう?でも、何かしら連絡してあげたらきっと喜ばれるんじゃない?とりあえず、今から休憩入ってね」
早苗さんに笑顔で肩を叩かれて、私は昼休みをとるために事務所に引っ込んだ。
ロッカーからカバンを取り出して、なんとなくスマホを確かめてみる。
あんなに毎日欠かさず私をランチに誘いに来ていた伊祥が、何の連絡もなく来ないなんてことはないと思ったからだ。
でも、仕事中放置していたスマホには着信もメッセージも入っていなかった。