五年越しの、君にキス。
「もう、大丈夫なの?」
「おかげさまで」
身を固くして胸をドキドキとさせていると、伊祥が私の首筋に頭を擦り寄せながら少し笑った。
私を抱きしめる伊祥の身体は、昨日の夜のようには熱くない。きっと、もうすっかり平熱に戻っているんだろう。
長引かなくてよかった。
ほっとして伊祥の腕の中で顔を上げると、私を見つめるライトブラウンの瞳と目が合った。
昨日の夜に私を見つめてきた、朦朧とした熱っぽい目とは違う。
明らかに優しい甘さを含んだその瞳から、目がそらせなくなる。
私を映す伊祥の綺麗な色の瞳を見つめ返していると、不意に目を伏せた彼が私の額にキスを落とした。
思わず目を閉じて肩を震わせると、伊祥が私をぎゅっと引き寄せて、瞼や頬にも唇を寄せてくる。
そうして最後に、唇の端に口付けると、私の右頬に手のひらを這わせてクスリと笑った。
「朝まで隣で寝て、少しは意識してくれた?」
意地悪く目を細めて笑う伊祥に、昨夜の弱々しさは少しもない。
なんだか騙されたような気がして悔しいけれど。少しどころか、ものすごく伊祥のことを意識した。
でも、敢えて口にして教えたくはない。