五年越しの、君にキス。

ベリーヒルズビレッジを出て二十分ほど経った頃、後藤さんがある通りでゆっくりと車を止めた。

そこは有名ブランドの直営店や高級ブティックが立ち並ぶ、お洒落な有名ストリートだった。

私も友達と一緒に観光気分で、ウィンドウ・ショッピングしながらぶらついたことがある。

ここが、目的地?

思ってもみなかった場所に連れてこられて目を(しばた)かせていると、車を側道に止めて運転席から降りた後藤さんが、後部座席のドアを開けた。

「どうぞ。降りて正面が、社長が待たれている店です」

「え?」

私に向かって手を差し出してくれる後藤さんの背後には、レトロな雰囲気の石造りの建物がある。

その建物を見つめてぽかんとしていると、微笑んで首を横に傾けた後藤さんに車から降りるように誘導された。

「ここは長く止められないので、私は後ほどお迎えにあがります。ゆっくりとお買い物を楽しんできてください」

「え、あの……」

楽しんできてください、と言われても……

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