五年越しの、君にキス。
引きつった笑顔を返していると、それに気付いたお見合い相手が笑いを堪えるように口元に手をあてて。奥さんが去ったあとに、思いきり吹き出した。
「なんか、めちゃくちゃ健闘を祈られてる感じだったけど。今の店員さん、梨良の知り合い?」
「うん、まぁ。ここの団子屋さん、うちの得意先だから」
仲人さんがいる間は、丁寧な言葉遣いで互いに他所行きの笑顔を振りまきあっていた私たちだけれど……
ふたりだけになった途端に、彼の話し方や態度に遠慮がなくなった。それは私のほうも同じだ。
「あぁ、それで。だから、一番良い席に案内してくれたのか。ここの団子屋さん、お見合いのあとに相手の人と話すのによく使わせてもらってるけど……何も言わなくてもこの席に通してもらえたのは初めてだ」
お見合い相手の彼が笑ってそう言いながら、テーブルに出されたお抹茶に手を伸ばす。
へー。お見合いのあとに、よくこの団子屋さんを使ってるんだ……
そんなことをさらっと口にしてしまう彼に複雑な感情を抱きながらも、平静な顔付きで私も茶碗を持ち上げる。