五年越しの、君にキス。


「そんな状況なのに、美藤ホールディングスの代表は伊祥さんとお茶屋のお嬢さんの結婚を許したの?」

「そうみたいよ。美藤ホールディングスの代表は、なんだかんだで昔から三男の伊祥さんには甘いから」

「上のご兄弟とは少し年も離れていらっしゃるし、お顔も飛び抜けてお綺麗だものね」

ふふっという彼女たちの悪意なさげな笑い声を聞きながら、手にしていたお皿を元の場所に戻す。

さっきまでは魅力的に思えていた高級レストランのお料理が急に色褪せて見え、食欲も急激に減退していた。


「伊祥さん、今夜はこのパーティーにそのお茶屋のお嬢さんを連れて来られていたみたいよ」

「そうなの?どんな方だった?」

食事をとる列から抜けて立ち去ろうとしたとき、彼女たちの話題の矛先が私に向いた。

列から中途半端に抜けかけた私を、彼女たちのひとりが不審げにちらりと見てくる。

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