ワンルーム・ビターキス

「…ん」


「あ、ごめん起こしちゃった?」




冷えピタを貼った冷たさで目をうっすら開けた翠。



そのトローンとして焦点の合わない瞳はゆっくり私を捉えて。


次第に意識がハッキリしてきたのか翠はムクリと起き上がった。




「大丈夫?無理しないで寝てなよ」




あ、もしかして自分がここにいること覚えてないとか…




「…なんで俺ここにいんの」





いつもより少し低くて掠れたテノールボイスはやっぱり不思議そう。


私が聞きたいよ…なんて。




「分からないけど、私が帰ってきたらここで寝てたよ。朝はソファで寝てたのに」



「…頭痛い。昨日の夜から記憶ねぇ」





きっと熱のせいだろうなぁ。




夜中のガタンって言う物音は翠がなんとか家までたどり着いて玄関でぶっ倒れた音だったらしい。


…あの段階で気づいてあげれたらよかったのに。





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