ワンルーム・ビターキス
私が…お酒を…


いやいや何それ、記憶ないし想像とつかないよ。





…でも、うっすらその光景が映像として頭に流れ込んでくる。






フローリングに座る私。


目の前にレモンのイラストがかかれた空き缶。


困り顔の翠。





私…本当にやってしまったのか。





「ほら寝ろバカ緋和。酔っ払い女」


「わっ」





翠に肩をトンって押されて力なくベッドに沈む私。



日頃の運動不足がたたってか免疫力のない私は風邪に耐えられないらしい。




「…子守唄代わりにさっき姉貴が言ってた話するから。つまんなかったり体辛くなったら寝ろよ」


「…うん」





そうして、翠はベッドに腰掛けてゆっくりと話し始めた。


“ 楠木翠 ” という人間について。






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