ワンルーム・ビターキス

「相楽さん、あなたのご両親今海外にいるのよね？新しい家が見つかるまで、どこか頼れる場所あるかしら…」




自分のアパートが燃えて辛いのは大家さんも一緒のはずなのに、ずっと寄り添ってくれていたんだ。


綺麗に掃除された建物、季節に合わせた可愛いお花でいつも彩られていた花壇。


全部、燃えてしまった。




「頼れる、場所…」




ここを失った私に、居場所はあるんだろうか。




「ご親戚でも、お友達の家でもいいから早く見つけなさい。もうこんな時間だし…
私が一人暮らしだったらよかったんだけど、娘夫婦と一緒に暮らしてるから…」




ごめんなさい、と頭を下げる大家さんに私は心が暖かくなって涙が出た。




「そんな…大家さんにはもう迷惑かけたくないですから。今までたくさんお世話になりました」




というか、誰にも迷惑はかけたくない。


ネットカフェ…そんなに長くは居られないだろう。



新しい家が見つかるまで、なんて言ってられない。


そんなお金、どこにあるって言うんだ。