ワンルーム・ビターキス
「…なぁ、迷惑って言われたことあんの?」



「え…ない、ですけど」



「じゃあ迷惑なんて思ってないと思うけど。迷惑だと思うなら世話焼いたりしない。お前はネガティブすぎるんだよ」




楠木さんは似合わない真面目な顔でそう言った。




「…でも、とりあえずもう大家さんのお世話になるつもりはないので」




大家さんは御歳65歳。


誕生日にもう定年よって、笑ってた。



早く新しい家が決まったよって、報告したいんだ。

安心して欲しい、私は大丈夫だって。




「…これからどうする気?親海外で親戚はあてにできない。野宿でもするつもり?」



「さぁ…とりあえずしばらくはネカフェにでも行きます。安心してください、学校はちゃんと行くんで」




幸い制服は着てたから無事だし、カバンも持ってる。

教材は全部置き勉してある。

どうにかなるでしょ。




「消防だの警察だのは頼る気ないの?」


「はい。だって100%親に連絡されちゃうでしょ?」


「なるほどな…」




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