ワンルーム・ビターキス


「…本当に良かったんですか?全部お金出してもらっちゃって」


「何回言うんだよ。住み込みの家政婦雇ったんだから当たり前だろ」




楠木さんはうちの生徒に会わないようにわざわざ遠くのショッピングモールまで連れて行ってくれた。




しかもベッドから服まで全部買ってくれて。


私が自分でお金を出したのなんて、楠木さんがトイレに行ってる間に個人的に買ったコスメだけ。



これでよかったのかな…




仮にも出会って2日の他人で、居候させてもらう身で家賃すら出させてもらえないのに。



しかもこの家広いしタワーマンションの上の方だし、絶対家賃高いのに…




「金には困ってないから心配すんな。社会人だし」


「楠木さんってお金持ちなんですね…」




初めて会った時から思ってた。


公務員で、社会人とはいえまだ二年目なのに。



スーツはブランド物、テーブルに置いてあったお財布もそう。


それにこの大きな家。


一人暮らしには贅沢すぎるくらい広い。



駅から徒歩5分程のタワーマンションの20階。


大人っぽい白でまとめられた4LDKの楠木家。



はじめて連れてきてもらった時、違う世界に来たみたいで開いた口が塞がらなかった。




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