ワンルーム・ビターキス
しかも朝勝手に探索した感じ、使っているのは寝室オンリーのようだった。

あとの3部屋は物置状態。




宝の持ち腐れとはこのことだ。


余った部屋のうち一番広いところを私に使わせてくれるらしいけど。


…この人、一体何者?




もしかして…いや、もしかしなくてもお坊ちゃまってやつだよね?




「何想像してんだ」


「いや、別に…楠木さんって何人家族?」


「5」




ってことは、三人兄弟…




「姉が1人と兄が1人。お前は?」


「…弟が、1人います」




ぽつりとつぶやくと、楠木さんはコーヒーを飲んでいた手を止めた。



嘘をついて、ひとりっ子だとでも言うべきだったかな。


でも、きっといつか全部話す時が来ると思ってたから。




「…へぇ、いいね年下」



「……聞かないんですか?」




弟はどこにいるんだって。


絶対思ったはずなのに。





「お前が話したい時に聞く。今はいい。コーヒーおかわり入れてくれるか?」




ポンっと頭に手が乗っかり、そのまま髪をクシャクシャにされる。


…ずるいよ、その優しさ。




「…お金、絶対返しますから」


「いらねえよ、JKから大金とる趣味はない」




絶対返してやる。

私の心のどこかで変なスイッチが入った。



…バイト、増やそう。





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