ワンルーム・ビターキス
「スイ」
「…え?」
「楠木さんじゃなくてスイって呼べ。」
楠木さんは私の目を見てそう言った。
── スイ。
羽に卒業の卒。
翠。
すい。
緑じゃなくて、スイって読むんだ。
楠木、翠。
「翠……さん?」
「さん付けんななんかキモい」
「ひど…」
一応つけてあげたのに、なんだこのひねくれた少年みたいな大人は。
「分かったよ…翠」
まだちょっと違和感はあるけど、一緒に住むしいつか慣れるだろう。
翠…か。
学校では呼び間違えないように気をつけないと。
まあ担当学年も違うし、会うことはまずないだろうけど…
「んじゃ、もう寝ろ」
「え?まだ11時…」
「いい子は寝る時間。はいオヤスミ。」
グイグイ背中を押されて、私は寝室に押し込まれた。