ワンルーム・ビターキス
「どうして、翠が…」



「昨日の今日だし、早く帰ろうと思って職員室で残りの仕事してたんだよ。そしたら1年の女子が騒ぎを見て先生呼びに来て。まさかとは思ったけど…本当にお前だったか」


「…私も、びっくりしてる」




まさかこんな時間に、こんな場所に現れるなんて思ってもなかったから。




あのニヤついた笑顔が脳裏に焼きつてきて、手首には掴まれた感覚と痛みが残ってて。


そんな自分がすごく嫌だ。

今すぐ着替えたい。お風呂に入りたい。




林先輩がいつもつけてるしつこいくらい甘ったるい香水の匂いが移っていたらと思うと吐き気がする。




「…緋和、歩けるか？」


「…うん、平気…だよ」




直接なにかされた訳じゃない。


精神的ダメージもそこまでないはず。



騒ぎを耳にしたギャラリーも集まってきてるし、変な噂が立つ前に帰らないと。





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