ワンルーム・ビターキス
なにが、起きてるの。
目の前には翠の彫刻のように綺麗な顔。
口元に、柔らかい感触。
長いまつ毛がゆっくり持ち上がり、その色素の薄い瞳と視線が絡んだ。
「…っ、わ」
何が起きたか理解した瞬間、衝動的に離れた私はソファから落ちて尻もちをついてしまった。
痛いよりもパニックが勝って。
「…あ、う…」
言葉が上手く出てこなくて、ただぼーっとした翠を見つめて口をパクパクした。
一方の翠は未だにソファで、その表情は伺えない。
「…ん、緋和?」
上体を起こして私を見た翠は少し考えるような顔をして。
何かを思い出したように目を丸くしていた。
寝ぼけてた…わけじゃないよね?
今の瞬間の記憶だけ失ってくれてたり…