年下の君を好きになっちゃダメだから……【完】
「美月、帰ったら忘れていいから、今だけ、俺の話、聞いてくれる?」

琉偉くんの真剣な表情に、私は息を飲んだ。

「……うん。何?」

片思いの相談かな?

泣き言でも言いたい気分なのかもしれない。

「俺、この1年、毎日、幸せだった。美月も、おじさんもおばさんもすごく良くしてくれて」

ん? 片思いの話じゃないの?

「うん」

私はうなずいて、先を促す。

「でも、辛いことがひとつだけあった」

えっ!?

「何?」

食事?
好き嫌いが言えなかったとか?

お風呂?

部屋?

私は分からなくて、首をかしげる。

「俺、美月の家に住むようになって、すぐに美月のことが好きになった」

えっ!?

あり得ない言葉に、私は、一瞬、声をなくした。

「でも、美月には彼氏がいて……
 だから、ずっと黙っていようって思ってた」

うそ……

「彼女に告白された時も、美月がやめろって言ってくれるのをちょっと期待してた。
 でも、美月は、付き合ってみれば?って言うから、俺は美月を諦めるために、彼女と付き合い始めたんだ。
 だから、彼女が言うことは、すごく俺の本心を言い当てられた気分で、何も言えなかった」

だって、そんな素振り、1度も見せたこと、なかったのに……

「俺、あと3年、美月の家でお世話になるから、これで気まずくなるのは嫌なんだ。だから、これ、聞いたら、すぐに忘れて。
 俺、美月が好きだ。
 ずっと、好きだった」

胸がいっぱいで、言葉が出ない。

だって、さっきまで、2度目の失恋で、もう心の中はズタボロだったのに……

こんなに嬉しい言葉、ある?

「美月、ごめん、困らせて。
 家に帰ったら、いつも通り、幼馴染みに戻るから」

琉偉くんは、そう言うけれど……

そんなの、嫌に決まってる。

私は、思いっきり、首を振った。

「ダメ……
 戻らないで……」

私は、ようやく絞り出した小さな声で告げる。

「美月?」

私の頬を流れ落ちた滴が、花びらの横に小さな染みをひとつ作る。

「ごめん。私もずっと隠してたことがあるの」

言わなきゃ。

絶対に言わないって決めたけど、今、言わないと、絶対に後悔する。
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