年下の君を好きになっちゃダメだから……【完】
「私、もう、半年以上前に、彼とは別れてるの」

「えっ!?」

琉偉くんは、驚いたように目を見張る。

「琉偉くんが、初めて彼女を連れてくるちょっと前に別れたんだけど、言えなくて……」

琉偉くんは、黙って聞いてくれている。

「私も琉偉くんが好きだったから。
 これ以上、琉偉くんを好きにならないように、自分を止めるために、ずっと彼とうまくいってるふりをしてたの。
 まさか、琉偉くんが、私のことをそんなふうに思ってくれてるなんて、思ってもみなくて……」

その時、琉偉くんは、そっと私の長い髪を一束手に取った。

「ほんとに?」

私は、無言でこくんとうなずく。

「美月、触れていい?」

琉偉くんは、私が静かにうなずくのを確認すると、そっと横から私を抱きしめた。

「美月が、俺を好きだくれてるなんて、思ってもみなかった。美月、俺と付き合ってくれる?」

琉偉くんに耳元でささやかれて、胸の奥がくすぐったいようなそわそわした感じがする。

私は、黙ってこくんとうなずいた。

「美月、ありがとう」

琉偉くんは、抱きしめた腕に、ギュッと力を込める。

そして、その次の瞬間、その腕をほどいて、ぼそっと呟いた。

「問題は、おじさんとおばさんに、打ち明けるかどうかだな」

あっ……

そうだ!

隣同士の部屋で、付き合ってますなんて言ったら、2人がなんて言うか……

「琉偉くん、それは、ちょっと……」

私が、うろたえてそう言うと、琉偉くんは、くくくっと笑う。

「言えないよな、やっぱり。
 2人だけの秘密にしよ!」

屈託なく笑う琉偉くんは、もう、いつもの琉偉くんだ。


なんだか、琉偉くんの方が年下なのに、琉偉くんの方が余裕がある気がする。

なんで!?


よく分からないけど、それでも、幸せだから、ま、いいか。

このまま、琉偉くんと幸せな関係が続きますように……



私たちが、この先、何十年も一緒に暮らすことになることは、この時の私たちは、まだ知らない。


─── Fin. ───


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