年下の君を好きになっちゃダメだから……【完】
「その、好きな人には、ちゃんと言ったの?」

琉偉くんは、首を横に振る。

「言ってみたら、変わるかもしれないよ? 略奪しろとは言えないけど、伝えることで、すっきりして、前に進めるかもしれないし」

私がそう伝えると、琉偉くんは、じっとこちらを見つめる。

今、こんなふうに見つめられるのは、正直、辛い。

2度目の失恋をした気分だから。

でも、私は、その辛さを隠して、穏やかな笑みを浮かべる。

「琉偉くんに好きって言われて、喜ばない女の人はいないと思うよ。だから、頑張って!」

「美月は?」

琉偉くんがかすれた声で尋ねる。

「ん?」

「美月なら、俺に好きって言われたら、どうする?」

そんな辛そうな声で、そんな仮定の話をしないで。

あり得ないって分かってる分、余計に辛くなる。

「私? 私は……」

そんなの、即座にOKするに決まってる。

でも、そんなこと、琉偉くんには言えない。

「美月なら、彼氏と別れる?
 忙しいからって、全然会えない彼氏じゃなくて、俺と付き合ってくれる?」

「うん」って言いたい。

言いたいけど……

「やっぱり、ダメだよな。
 分かってる。ごめん、変なこと聞いて」

琉偉くんは、そのまま、上を見上げる。

桜を見てるのかな?

私は、そんな琉偉くんを見上げる。

「琉偉くんの好きな人って、どんな人?」

私が、そう尋ねた瞬間、琉偉くんの肩が、ピクリと揺れた。

「優しい人だよ。明るくて、優しくて、暖かくて、ずっと一緒にいたいって思える、そんな人」

そんなに好きなんだ。

やっぱり、私の想いは、永遠に封印しておかなきゃダメなのね。

「そう。いつか、その想いが届くといいね」

私は、自分の想いを完璧に隠して伝える。

うん、大丈夫。
私、ちゃんとお姉さん、できてる。

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